2025年 7月の記事一覧

育毛

第6話「鏡の中のもう一人の男」

トモユキは朝、洗面所の鏡の前に立つたび、まるで知らない誰かと対峙しているかのような感覚に囚われていた。そこに映る自分の姿は、彼が思い描いていた「自分」とは少し違っていた。髪は薄くなり、分け目の地肌が以前よりも明らかに見えている。ほんの数ミリの差が、彼の心に大きな影を落としていた

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第5話「風が怖い日」

朝のニュース番組の天気予報で「今日は風が強く吹き荒れる一日になります」と気象予報士が朗らかな笑顔で告げていたとき、トモユキはもうベッドの中で憂鬱な気持ちに支配されていた。 風が強い日が嫌いだった。 いや、「嫌い」という言葉ではまだ足りない。 風が吹くたびに、自分の髪の毛

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第4話 帽子をかぶる人間たち

キャップをかぶると、視界が少し狭くなる。そしてその狭まった視界の中で、人の目を恐れる気持ちが少し和らぐ。そんな感覚が、今のトモユキには必要だった。「蒸れるな」と、帽子をかぶったまま歩きながら、口の中で小さく呟いた。7月の陽射しは強く、風はぬるい。それでも帽子を脱ぐという

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第3話 美容室で言われたくなかったこと

土曜の昼下がり。トモユキは、3ヶ月ぶりに美容室に電話をかけた。電話をかけることそのものが、すでに勇気の要る行為だった。なぜなら、その声の向こうにいる誰かが、“俺の髪の変化”に気づいているかもしれないからだ。「あ、もしもし、トモユキと申します。今日、空いてますか?」「はい

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第2話 洗面台の上の地獄

朝、目が覚めて最初に確認するのは、もうスマホの通知ではなく、枕になった。まだ明けきらぬ薄明かりの中、トモユキは首をひねって、白い枕カバーの上をじっと見つめる。そこにあるのは、細く、少しうねった髪の毛――1本、いや2本。「……こんなもんか」口に出してみると、余計に現実感が強まった

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第1話 前髪の密度について

月曜の朝、いつもの通勤電車に揺られながら、トモユキはふと窓に映る自分の顔に違和感を覚えた。顔ではない。目でも鼻でも、口でもない。それはもっと上のほう――額、いや、そのすぐ上。前髪のあたりだった。満員電車の中、窓はうっすらと曇っていたが、反射ははっきりしていた。彼

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私の薄毛体験記

薄毛に気が付いてから、悩み・焦り・不安になりもがいてようやく薄毛を克服して好きな髪型を出来るようになるまで、半分フィクション・半分実体験としてこれから書いていきたいと思います。僕と同じ薄毛に悩んでいる方への参考に少しでもなれば幸いです。2025 / 07 / 1